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ignal Berry






完全に遅刻だ。
水色に越智さんへ遅刻する旨連絡してくれるようメールで頼んだその後、携帯の画面表示で時刻を確認して額を押さえる。
いつもは朝から鬱陶しい程のハイテンションで起き抜けにも全く遠慮せず飛び掛かって絡んで来る父親が、今朝はトイレに籠っていたとかで襲撃して来なかったのだ。お陰でうっかり穏やかな眠りに夢中になってしまい……こんな時間だ。
9時まで1分、どんなに近い所に学校があっても間に合わない、というか既に現在進行形で遅刻している。
パチンと携帯を折り畳む。妹に無理矢理付けられた赤い首輪の白い犬のストラップがゆらゆらと揺れた。電車が終点の駅名を繰り返す。



見た目の派手さを差し引いても、妙に印象的な学生だった。同性に華のようなものを感じるとは思わなかった。匂う微かな甘さは、他人に無関心でいれば嗅ぎそびれていたに違いない。それにしても、同性まで許容範囲だったとは、自分の人生も存外平淡でもないということか。
先に降りていった学生の後ろに流れで続く。終点だ、自分だけじゃない。
傍らに雛森が並ぶ。
学生は最近の若者らしくそこそこに発育良好らしく、背も自身の目線に近い。反して身体は意外なくらい肉が少ない。体脂肪率10%前後ではないかと思うくらいの薄さに、制服越しにも背や腰の骨張った感触を想像する。
注視するのはその更に下。脱ぐまでもなく分かる形の良さと、年齢に相応しく体つきにも相応な滑らかな手触りと硬い弾力とを想像して唾液が湧く。かぶり付きたい。

「そんなに興味あるの?」
異様なまでに高まった感心を指摘されたかと慌てて雛森を振り返れば、彼女もまた学生の尻、ではなくそのバックポケットからぶら下がった白い犬のストラップを指差した。
「可愛いよね、お父さんストラップ。最近物凄く大きいのもあるんだよ」

……とてもではないが、ストラップじゃなく尻を見ていましたとは言えなかった。









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