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ignal Berry
「……ホント、変なヒトだよ」
明かりを可能な限り消して、落として、絞った閉店後の店内は暗い。椅子を上げていない唯一の円テーブルに浅く腰掛け、同じ性の男の腕に囲われて、青年は独り言のように呟く。
「変とは酷いな。一月もの間お前を庇ったが故に牢に囚われていた男に……あの夜、逃げようと誘ってくれたあの時のお前とはまるで別人だ」
まさか、もう誰かに心を移したのか?
青年の浮気を詰るように、男の手がその大腿を掴む。粗末な手触りの粗い生地越しにそれを撫で上げ付け根を妖しく擽るのに、青年は逆らわず脚を開く。
投げ与えるのとは違う受け入れる体、嬉々として露にした青年の胸に、腹に口付ける男の手が股間を撫で回すのを眇めた視界に見下ろしながら、青年は男の銀髪に気付かれることなく掠めるような口付けを与えて。
「兵隊さんって、結構即物的だな……」
愛していると訴える男の返事があまりにピッタリで、ジプシーの青年は突き上げられるまま大きく胸を仰け反らせた。
(c)Sakusi