S

ignal Berry

S体質な彼




「ぃっ……」
掴まれた髪を引かれ、頭皮が引き吊る鋭い痛みに負けて仰け反る。
首の筋を痛め兼ねない勢いと髪を掴んだままでいることに対する抗議のつもりで冬獅郎が目を眇めれば、一護は楽しげに歯を見せて笑った。情事の最中にあって悪童を思わせる表情は、確かに違和感があるのに視線を誘われる。

「なぁ、もういいから……」
後孔に押し込めた指を後ろに回した一護の手に手首ごと握られて抜き取らされる。もういいと一護は言ったがそんなはずはない。冬獅郎の指をたった二本押し入れられるようになったばかりだというのに、一護は躊躇う様子もなく掴んだ手首を放り出し、代わりに勃ち上がっていた冬獅郎の陰茎に手を沿えて、確かめるようにからかうように、思わせ振りでしかない不要さで軽く撫で回すと、膝を崩して腰を落とし始めた。
誘導は後ろに回した手だけ、慎重に沈められる身体は怯えているようでもある。
こんな性急過ぎて乱暴な交わり、頭では無理だと分かっていても勝手に期待する冬獅郎の先端に、違いなく熱い後ろ口が吸い付いた一瞬間を衝動が四肢を支配する。
手の中の性器がビクリと跳ねたことに、一護は口角を上げた。

「一護……っ」
感覚の鋭い先だけを浅く受け入れて今更迷うような素振りで一護は腰を揺らすが、冬獅郎は焦らされていると直感する。突き上げたいと腰が跳ねれば振り切るように逃げてしまうくせに、一護の好きにさせようと諦めて受け身になれば擦り付けて煽られる。飲み込まれたい熱の在処を教えるだけで、いつまでも与えられないのは苦しい。
自然冬獅郎が刻んだ眉間の皺を、一護の指がゆっくりと思わせ振りに撫でる。薄い皮の下から衝き上げる冬獅郎の苦痛と懊悩が指先に縋るようで、滲んだ汗のベタ付きすら舌で舐め取りたいほどに愛しい。

はァ、と一護が冬獅郎の頭上に落とした震え混じりの吐息を切っ掛けに、肉と肉とが喰らい合い侵し合う。解し切れていない後ろ口の肉輪はキツく、余裕があった一護の表情は容易く歪み、うっすら染まっていた頬からも血の気が退いていく。
明らかに辛い一護の様子も気掛かりではあるが、冬獅郎自身にも余裕はない。
後孔に食い絞められた自身は血が通わず進退窮まり、このままでは萎えるばかりか使い物にならなくなる不安さえ湧き上がる。

「イチ、ごっ……!」
無理だから一度抜けと汗の浮いた尻を掴んで促そうとするが、一護は叩き落とすように冬獅郎の手を払い除け、深く息を吐きながらその肩を掴んでいた手で頭を抱えるように抱き締める。冬獅郎の気のせいか、額を擦り寄せる一護の目に痛みよりも満足げな色が見えて。
「一護    ?」
「んゥ……馬鹿、黙っ…て……」
ろ、が言えないまま吐き出された呼気にはやはり笑みがある。
痛みを殊更に好む性癖は一護にはなかったはずだと、そう思う端から笑顔に切り崩されていく。どういうつもりだと意図が知れず、呆然と見上げる間に再びゆっくりと進み始めたせいで冬獅郎の苦痛は増し、正直なところ息さえままならない。吸うことも、吐くことも。食い縛った奥歯からも力を抜けないまま、それでもそろそろと細く呼吸を繰り返す。
息苦しい、そもそも呼吸をしなければならない身体構造に憤りすら覚える。

「ふ……ははっ……」

不意に一護が笑い出したせいで波のように押し寄せる内壁の収縮、本当に死ぬかと思うような苦痛に襲われる。今の冬獅郎には快楽などない、項から足裏まで、体の背面限定で不快な脂汗がびっしり吹き出す。身動きが取れない、表情が歪むのを止めることもできなければ、一護から隠れることも誤魔化すこともできない。

「カオ、上げろ……よ」
なぁ、見せて。
囁く一護の声が耳を溶かし腐らせていくよう。
裂けそうに薄く張り詰めた肉輪を震え強張る指腹で撫で擽り、少しでも綻んではくれないものかと思うけれど。
「悪戯してね、で……ホラ」
「一護……」
「お前の、耐えてる顔……」
「一護?」
何を言うつもりか、請われるままに顔を上げれば一護の目は愉悦に蕩けて。
「あぁ    ……」
「……ぁ?」
ただキツく締め付けるだけだった後孔が突然、ぐずぐずと腐った果物が崩れるように緩んだ。一気に流れ始めた血流に冬獅郎の目の前が真っ暗になる。
ドクドクと身体を廻る血流を感じる、視界はなお暗い。聴覚も遠い。冷えた汗の不快感はすぐ側に    当たり前だ、汗は敷布に滲み込み蒸発を待っている。

「……最高にクる」

耳朶を何とも知れない濡れた感触が這い、生暖かい吐息が耳孔に注がれる。鳩尾辺りには一護の勃ち上がった物の先が触れてぬめりを擦り付けていた。
肌が粟立つ程の悪ぞ気を背骨が這い回り、しかしそれも熱い媚肉に変じた肉筒に食まれれば悦楽に転じて。
「ァ、あ……んン! ん、ぅく……」
目眩を振り切って、冬獅郎は上半身を起こし、掴んだ一護の腰をがむしゃらに引き摺り降ろす。骨同士がぶつかり合って響く鈍い痛みが生み出す波紋に、身体の細胞が歪み作り変えられるそんな妄想すら浮かんだ。
「お前の、エロい声の方がヤバい     
何もかも搾り取られそうな一護の腰を掴んで揺すり立てる。奥へ奥へ、穿てるだけ衝き上げて冬獅郎は腰を捻り入れるようにして最奥を捏ねる。仰け反った一護は喉を震わせて笑ったかと思えば、潤んだ目を細め、動物がそうするように鼻先を擦り寄せて、甘えるふりで唇に歯を立てたり。
「とーしろ、と…しろ……」
聞こえているかと問う、乱暴に涙を拭った手が冬獅郎の肌を舐める。
「……なぁ?」

我満      してみる?

「っ……!?」
蠱惑的な囁きに反射的に腹筋を絞る。溜め込んだ精液全て搾り取ろうとするように揉み込まれ締め付けられ、堪える冬獅郎の必死さを見下ろす一護の笑みは最高にいやらしい。強制された激烈な射精感を必死で留め、無理矢理にもタイミングをずらして限界まで衝き入れた先で全て吐き切る。
「ンぅ    、ふ……」
一拍置いて腹にぶち撒けられた灼けそうに熱い一護の精液に、不意に奇妙に笑いが込み上げた。









乗っかって笑えばいいよと言われたんです……!



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